六朝時代の志怪小説は、もともとの「小説(とるにたらないものがたり)」的なものから、本格的なストーリーをそなえた短編小説へと変化していった。その過程で、志怪のころの『怪』を描くことが必ずしも必須の条件ではなく、「鶯鶯伝」や「李娃伝」のように、現実に根ざした、「怪」の登場しない作品もあらわれるようになった。その点で、唐のこれらの伝奇小説は、その後の中国文学における白話作品のさきがけになっていった。
フィクションの根拠に、史実とは異なる歴史や血筋あるいは奇異な伝承・民話などを用いる小説の形式。たとえば「封印されていた古文書」であるとか「呪われた旧家の血筋」であるとか「某地方に伝わる風習」であるとか「歴史の裏舞台で暗躍した秘密組織」などを軸に何らかの超常現象や超能力も関与しながら物語が展開する。フィクションの根拠に魔法を置く
ファンタジーとは類縁関係にあり、伝奇と
ファンタジーの判別が困難な作品例もある。特にヨーロッパを舞台にした伝奇は必然的にファンタジーとの境界が曖昧であるが、魔法を使わないヨーロッパを舞台にした伝奇は成立し得る。また、「日本や中国を舞台にしたファンタジーが伝奇である」と説明される場合もあるが、日本を舞台とした伝奇的でないファンタジーも存在するので(たとえば『
新本格魔法少女りすか』)定義としては適当でないと考えられる。