音楽に内在する美の追求は古くから行われており、古代ギリシアの学者であった
ピタゴラスは音楽を数理的に分析してその美を調和(ハルモニア)に求めていた。また
プラトンも『国家論』において
教育学的な見地から音楽には
善悪の性格があり、その性格が聴者に影響するものと考えており、同時代を生きた
アリストテレスも音楽の
本質をその感性的な特性を認めて
教育と遊戯の中間点に見出している。中世においては音楽は
スコラ哲学の思想を背景として音楽を神の啓示へと人々の直感を導くと論じ、
アウグスティヌスはユビルス論にて音楽の表現力が一部の言語的な表現力を超えていることを認めている。やがてこのような音楽美学は教養人にとって必須の教養として音楽を確立し、18世紀の
バロック後期において音楽の目的を情緒の表現または喚起だとする
情緒説に繋がっていくこととなる。
ロマン派の時代には音楽は大きく発達し、さまざまな芸術が音楽のようになろうと志向すらしていた。そしてハンスリックは音楽美は純粋な音の結合の中で存在するものであり、音楽にとって外部であるさまざまな概念は無関係であるとして音楽の持つ独自的な性格を論じ、現代の自律的音楽美学に貢献する。20世紀以降にはそれまでの形式主義が退けられ、シェンカーやハルム、メルスマンが音楽の本質を力性やエネルギーに還元しようと試みて新しい音楽美学の方向を打ち出す。近年ではアルノルト・シェーリングの私的象徴的解釈などが注目されている。